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家族信託によくある13のデメリット・盲点と解決策をやさしく解説

費用負担が重く不祥事も少なくない成年後見制度に代わる認知症対策として、家族信託が注目されています。

しかし、家族信託にもそれなりの費用負担があること、税金対策にはならない、などメリットばかりではありません。

よって、家族信託に飛びつく前に、デメリットもしっかりおさえた上で専門家との話し合いに臨みたいものです。

目次

家族信託によくある13のデメリット・盲点とは

①初期費用がかかる

家族信託にかかる費用の総額は、(一社)家族信託普及協会によるとおよそ信託財産評価額の1.2~2%

例えば信託財産の評価額が5,000万円だとすると、60万~100万円になります。

総費用は、信託財産における金銭と不動産の割合によって変わり、金銭の割合が大きいほど安く、反対に不動産の割合が大きいほど高くなります。

これは、信託財産に不動産を入れる場合、信託不動産の登記手続き時に支払う登録免許税(土地は評価額の0.3%、建物は評価額の0.4%)が結構な金額になるからです。

さて、成年後見制度を利用した場合の費用負担はいくら位でしょうか?

職業後見人に支払う報酬は年24~72万円

認知症発症後の余命は5~12年と言われているので、仮に10年生きたとすると、専門職後見人に支払う報酬は計240~720万円に上ります。

家族信託と成年後見制度とでは、費用コストに格段の違いがあります。

認知症対策は家族信託だけではなく、他にもいろいろなものがあるので比較検討してみるのもいいです。

②農地は家族信託できない

農地は家族信託のニーズが大きいにもかかわらず、農地法により、農業協同組合等が引き受ける場合を除き、信託が原則禁止されています

ただし、駐車場や宅地などへ農地転用の届出または許可を取った後なら家族信託ができます

市街化区域(都市計画上、農地を開発して非農地化することを政策的に促進するエリア)にある農地は、農業委員会に届出さえすれば、信託できます。

一方、市街化調整区域(農地を維持しようとするエリア)のある農地については、農業委員会の許可が下りて初めて信託できます。

農業委員会の許可が下りるかどうかはわからず、また、時間もかかるため、家族信託設計の際には「農業委員会の許可が下りたら信託する」という条件付信託契約にします。

③相続税対策にはならない

家族信託には、相続税対策としての期待もあります。

事実、「家族信託は相続税対策にもなる」と書かれてある記事が散見されます。

しかしながら家族信託は、相続財産の管理・処分権を親がまだ生きているうちに子らに渡す、つまり早めに手渡すだけの制度であるため、家族信託に相続税対策の効果はありません

認知症対策と相続税対策を同時に狙うなら、生前贈与の一つ「相続時精算課税」があります。

(相続時精算課税については【⑬収益を生む財産や今後値上がりが予想される財産を家族信託すると損する】でも解説しています)

間接的な節税効果ならある

よく行われている相続税対策として不動産を活用したものがあります。

土地の評価は、国税庁が定める路線価が基準となり、時価の約8割と言われています。

建物は、固定資産税評価額となりますが、これは時価の最大5割程度と言われています。

つまり、現金をそのまま相続するより、不動産で相続すると相続税評価が2~5割程度下がり、相続税圧縮効果が得られます。

ところが、不動産を活用した相続税対策には年単位で時間がかかるため、その間に親が認知症を発症したり、判断能力を失ってしまうと契約行為ができなくなり相続税対策が頓挫してしまいます。

そこで家族信託にしておくと、託された家族が時間を気にせず相続税対策を継続できます

④家族信託の専門家が少ない

家族信託は、成年後見制度や遺言などと比べるとまだまだ新しい制度であるので、弁護士や司法書士など法律専門家であっても彼らのすべてが家族信託に精通し実務経験があるというわけではありません

家族信託の業務に最も縁の深い司法書士でも家族信託を正確に理解している者は半分もおらず、まして実務に精通し、設計のコンサルティングができる司法書士は全体のわずか数%しかいません。

弁護士業界でいうと1%にも満たないと言われています。

経験が浅い専門家に依頼すると、契約書に不備が生じたり費用や手間が余計にかかってしまう可能性があります。

家族信託の相談を専門職の知り合いに持ちかけたところ、「家族信託に詳しくない」ということを司法書士としての職業的なプライドから言い出しにくいため、家族信託を行わない方が良いと説得され、結果として家族信託を行う絶好の機会を逃してしまう事例が発生しています。

⑤受託者が暴走するリスクがある

家族信託を締結すると、受託者(子など)には幅広い権限が与えられます。

信託の素人である子は、財産管理がいい加減だったり、資産を使いこんだり、投機的商品に手を出して失敗したり、下心をもつ他人にだまされ詐欺に遭うような事態が起こりえます。

実際に、ある家族信託の専門家に話を伺うと「FX投資で一発当てたいのだが可能か?」といった相談が寄せられることもあるそうです。

突然大きな財産を自由に使えるようになると、人間は一度くらいは羽目を外してもいいだろうと考えがちだし、それがたまたまうまくいくと、それを繰り返す傾向もあります。

このように家族信託は、受託者が暴走してしまう危険性を孕んでいます

受託者の暴走を防ぐ方策として、

  • 家族信託の契約締結と同時に受託者(子など)に信託事務を任せますが、親(委託者)は子が暴走しないように監督し、子が管理処分方針や判断に迷ったときに的確に相談に乗れるようなサポート体制を築いておきます。
  • 信託監督人を設けて、受託者が信託目的に沿って適切に財産を管理しているかを定期的に監査します。
  • 受託者を複数にしておきます。
  • (株)ファミトラで家族信託を組成すると信託管理人が無償でつきます。

受託者の忠実義務

法律上、受託者(子など)は、常に受益者(親)の利益を最優先して信託事務を行わなければならないことが決められています。

(信託法30条) 受託者は、受益者のため忠実に信託事務の処理その他の行為をしなければならない

⑥認知症発症後は家族信託できない

親が認知症を発症し、判断能力を失った後では家族信託はできません

これは、事故を起こしてから自動車保険に入れないのと同じです。

しかし、認知症の初期では家族信託できる可能性がまだ残されていますし、そもそも認知症に似て非なる病気が認知機能低下を引き起こしていることも多く、原疾患の治療により認知機能が回復することもあります

⑦家族信託開始までに時間がかかる

本人に認知症の疑いがあるため、すぐに認知症対策を始めたくても、家族信託だと開始までに数カ月の時間がかかるため、間に合わないことがあります

家族信託を開始するまでにかかる時間

金銭のみの場合信託内借入を予定している場合不動産+金銭の場合ローン付き不動産の場合
2週間~2カ月3~4カ月2カ月3~4カ月

高齢者は、一見健康そうに見えても健康状態が急変することもよくあります。

また、家族信託を行いたいときは、まず家族信託に精通した専門家探しから始めますが、都市部ではなく地方にお住まいだと、家族信託に精通した専門家がなかなか見つからず、余計に時間がかかったりもします。

そのため緊急の場合は、家族信託はあきらめ、次善の策として生前贈与やインターネットからでも申し込める信託銀行の商事信託などを使うとスピーディーに認知症対策ができます。

家族信託最大手トリニティ・テクノロジー㈱の「おやとこ」は、「最短2週間で家族信託ができることがある」とうたっています。

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⑧公正証書化しないとトラブルが起こり得る

家族信託契約書を公正証書化せず、ワードなどの私文書で作成しても法的効力は変わりません。

信託契約書を紛失するリスクがある

しかし、私文書には紛失リスクがあります

家族信託契約書は、長期的かつ重要な財産管理に関する重要書類です。

公正証書化しておくと、万一契約書の原本を紛失・棄損しても再発行できます。

公正証書は後日の争族を防止する

私文書で作成した家族信託の契約内容を快く思わない関係当事者(相続人など)がいた場合、信託契約の有効性をめぐって争い(争族)が起こる可能性があります

特に私文書に署名押印した場合、

「委任者本人の署名ではない」「実印が本人の知らない間に使われた」「契約締結日が改ざんされた」

「本人が無理やりサインさせられた」「信託契約日の時点で委託者には判断能力はなかった」

などの争点が出てきかねません。

しかし、公正証書を作成した場合、公証人は委託者と受託者双方に本人確認と信託契約の内容の確認を行い、同時に委託者の判断能力も検証します。

そのため、公正証書によって信託契約が作成された後は、その法的効力を否定することは困難になります

公証役場での流れ(所要時間:45分~1時間)

STEP

公証人が委託者と受託者に対して本人確認(住所、氏名、生年月日)を行います。

STEP

信託契約の内容確認を行います。信託契約の各条項を公証人が声に出して委託者と受託者に読み聞かせながら、内容に誤りがないかどうかを確認していきます。

STEP

信託契約の内容に間違いがなければ、委託者と受託者双方で信託契約書に署名押印します。これにより法律上信託契約が成立しました。

STEP

信託契約書の正本を2通(委託者分1通と受託者分1通)公証役場から受領します。最後に公正証書の作成費用を支払います。

公正証書がないと信託口口座が作れない

家族信託契約が締結されたら、速やかに信託口口座という信託専用の口座を開設して、委託者(親)の口座にある預貯金を信託口口座に移動させるという手続きを取ります。

ところが、その信託口口座を開設するためには、公正証書で作成した信託契約書を銀行に提出し審査(リーガルチェック)を受けなければなりません

銀行は、この審査により委託者(親)の意思に問題がないと判断します。

信託口口座の問題点

もっとも、信託口口座の作成に応じている銀行は、まだ少数で全体の2割程度です。

また、同じ銀行でも支店が異なるとできない、顧客によって作ってもらえたり作ってもらえなかったりする、顧客の預金残高や属性、銀行とのつながりの深さ、支店長の裁量により作ってもらえたなど、すべての顧客が一律の基準で信託口口座が作成できるまでには至っていません。

受託者(子など)の別銀行口座で代用可

解決策として、受託者(子ら)が新たに自分名義の口座を開設するか、ほとんど使わず眠っている既存の銀行口座があればそれを使うことで信託口口座を代用できます

受託者の個人用口座と信託用口座がきっちり区別されていればよく(分別管理義務)、贈与税も課税されません(税務は実態に基づく課税を採用しているため)。

⑨認知症対策は家族信託以外にもいろいろある

2000年成年後見制度が誕生
2006年家族信託が誕生
2012年後見制度支援信託が開始
2018年後見制度支援預金が開始
2021年三菱UFJ銀行が代理人届出制度を開始
2024年相続時精算課税に年110万円の基礎控除が創設

そもそも、認知症対策は家族信託だけではありません。

2000年 成年後見制度の誕生 

2000年に介護保険制度の発足にともない成年後見制度が誕生

高齢者が介護サービスを利用する際にはサービス提供事業者との間で契約をかわす必要があり、認知症などで自ら法律行為を行うことができない利用者を支援するため成年後見制度が導入されました。

参照:厚労省 成年後見はやわかり

2006年 家族信託の誕生

2006年、小泉純一郎内閣の時に信託法が改正され、アメリカ合衆国で普及していた家族信託が日本にも導入されました。

後見制度支援信託、後見制度支援預金が相次いで誕生

頻発する成年後見人による不正横領事案を防止するため、2012年に後見制度支援信託が、2018年には後見制度支援預金が相次いで始まりました。

これにより成年後見制度を使わなければ本人の預金を全く動かせないということはなくなりました。

費用については、後見制度支援信託では専門職後見人に支払うおよそ20万円の報酬がかかりますが、後見制度支援預金では実質上かかりません。

特に本人に500万円以上の預金があると、家庭裁判所はこの制度の利用を家族に勧めています

2021年 代理人届出制度を開始

2021年に三菱UFJ銀行が代理人届出制度を開始

預金者が事前に銀行窓口で代理人届出をしておけば、認知症発症後に代理人が預金者に代わって銀行取引ができるようになりました。

この代理人届出制度は無料で(一部の信金で有料)、銀行窓口で簡単に手続きができるという大きなメリットがあります。

参照:三菱UFJフィナンシャルグループ 「予約型代理人」サービスの導入について

2024年 相続時精算課税に年110万円の基礎控除が創設

生前贈与には、「暦年贈与」と「相続時精算課税」があります。

このうち暦年贈与は、従来から年間110万円の基礎控除があったため、節税対策として広く使われてきました。

ところが2023年の税制改正で、相続時精算課税にも年間110万の基礎控除が認められ、節税効果が得られるようになりました。

額が大きい財産を贈与するには、暦年贈与より相続時精算課税の方が向いているため、今後は相続時精算課税の利用者が大幅に増えることが予想されます。

※相続時精算課税については【⑬収益を生む財産や今後値上がりが予想される財産を家族信託すると損する】でも解説しています。

参照:令和5年度相続税及び贈与税の税制改正のあらまし

このように認知症対策の選択肢は年々多くなってきています。

⑩家族仲が悪い場合、家族信託できないことがある

例えば受託者となる長男が弟、姉妹との関係が悪く、日頃の往来が断絶しているような場合、家族信託できないことがあります

私自身、弟との関係は良好とは言えません。弟は自分の利益に少しでも反すると激昂し執拗に反対する性格で、話がまとまったためしがありません。

こんな場合でも家族信託が不可能というわけではなく、親と長男の間で信託契約を結べば法的に効力が生じます。

法律上、推定相続人の同意は必須ではありません。

しかし、将来の相続トラブルを防ぐために、推定相続人の同意を得た上で話を進めていくことが薦められています。そのため家族信託を断念するケースがあります

やむを得ず全員の同意を得ずに家族信託を行う場合は、同意しなかった人に不利益にならないよう、遺留分に十分配慮するなど、細心の注意を払う必要があります

⑪家族信託の開始と同時に財産の管理・処分権が受託者に移る

通常、家族信託は契約締結と同時に効力が生じるのが一般的ですが、親が認知症になって初めて効力が生じるように設計することも可能です。

しかし、家族信託に精通した専門家は、家族信託の契約締結と同時に効力が生じる形を薦めることが多いです。

この場合、家族信託が開始すると、親は信託財産を自分では管理できなくなります。

これに対し、「認知症になったら息子娘に任せるのはいいけれど、今すぐに財産の権限が移転してしまうのは不安だ」と心理的な抵抗を感じる親が少なくありません

家族信託に精通した専門家は、

あえて親が元気なうちに家族信託を始めることで、自分の希望や想いをしっかりと子に伝える時間を確保できます。
また、親は子の財産管理方法を監督し、将来に安心して財産を託せるよう指導し育てるための準備期間も得られます。

などど説明しています。

株式会社ファミトラで家族信託を組成した場合、信託監督人が無償でつきます。

⑫受託者が不在のまま1年が経過すると強制終了してしまう(1年ルール)

家族信託の期間は、親の長寿のおかげで20~30年以上続くことも十分にあり得ます。

そうなるとこの間に受託者(子など)が親より先に亡くなる事態も考えられます。

受託者の死亡等で財産管理者がいなくなると、新しい受託者を選ぶ必要があります。

しかし、委託者(親)がすでに認知症を発症していたり、健康状態が悪化していて新しい受託者を選べない可能性もあります。

もし受託者が不在のまま1年が経過すると、信託契約は法的に強制終了してしまいます(信託法163条第3号)。

これを防ぐための方策として、

  • 控えの受託者(予備的受託者)をあらかじめ決めておき、信託契約書に記載しておきます。
  • 信託契約書の作成時に新たな受託者(後継受託者)を決めておくことが困難な場合は、信託監督人が新たな受託者を選任できるような条項を契約書に含めておく

⑬収益を生む財産や今後値上がりが予想される財産を家族信託すると損する

アパートや株式、投資信託といった財産は、それぞれ家賃、配当金、分配金といった収益を生みます。

このような収益を生む財産や、価値が暴落している株式は、早めに生前贈与(相続時精算課税)しておいた方が、家族信託に入れるより相続発生時に支払う相続税が少なくなります

なぜなら生前贈与(相続時精算課税)は、贈与時の評価額でもって相続税を計算し、家族信託では相続発生時の評価額で相続税を計算するからです。

生前贈与(相続時精算課税)には、他にもメリットがあります。

税制の改正により2024年1月から相続時精算課税に年間110万円の基礎控除が創設されたことで、節税対策としても使えるようになりました

相続時精算課税は、従来利用者が低迷していましたが、今後利用者が急増することが予想されています。

参照:令和5年度相続税及び贈与税の税制改正のあらまし

収益を生む財産や今後値上がりが予想される財産は、生前贈与を検討する。

まとめ

以上、新鮮で万能なイメージがある家族信託のデメリット・盲点について解説してきました。

これらの欠点を理解した上で行うのなら、家族信託はとても魅力的で頼れる制度です。

認知症で判断能力がなくなったあとでは家族信託は手遅れなので、まだ元気なうちに早めのアクションが大事ですね。

また、だれに家族信託のコンサルティングを依頼するかもとても重要です。

迷ったら、家族信託最大手トリニティ・テクノロジー㈱の「おやとこ」がおススメです。

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